熱海楠細工の特徴
伊豆一円で豊富に生育している楠を素材に、天然漆で仕上げられる楠細工は、木目の美しさ、香り、防虫効果が特徴です。(虫害や腐敗に強いため、古来から船の材料として重宝されていました。)
特に楠細工の命は木目であることから、原木の選定は極めて厳しく行われます。
また天秤ほぞ(三角ほぞ)といわれる伝統的なほぞひきの技法を用い、無垢材の宿命ともいわれる狂いを防ぎます。
また、楠は節が多い木であることから、木地職人は楠にあう一枚カンナを自ら作り、使います。
このカンナは一枚刃で刃口の部分と刃の間に髪の毛が通るくらいのすき間しか空いていません。
この精巧なカンナで木肌を滑らかに仕上げていきます。
接着剤には、漆となじみもよく、堅牢性にすぐれている膠(にかわ)を用います。
塗装には国産漆をふんだんに使い、木目が活きるように直接素材に漆をしみ込ませるように塗り込むのがポイントです。
楠と漆のはなじみがよく、それだけぜいたくな価値ある製品ができあがることになります。
楠 (くすのき)
くすのきは、木に南と書いて「楠(くすのき)」。
文字が示すように暖かい地域に分布しています。
庭園樹・街路樹としても広く植えられ、公害・騒音対策の効果があります。
また最近の調べでは、発がん性のあるダイオキシンをくすのきの若い芽が成長の過程で吸収していることがわかっています。
くすのきは、常緑樹なので緑の葉を絶やさず、その壮大さは目を見張るものがあります。
成長がはやく、また大変長寿なことから巨木・名木になっているものも多く、天然記念物に指定されているものが約30本以上もあります。
楠の特徴は、強い樟脳(カンフル)の香りがあることです。
この香りに防虫効果があるため、箪笥などの家具類に利用されています。
熱海楠細工の箪笥は、引き出しを開けると樟脳の芳香のいい香りがします。
これは箪笥の材料に楠をふんだんに使い、防虫効果を期待しているためです。